三事忠告に学ぶリーダーシップ

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皆さんこんにちは!

本日は、「三事忠告に学ぶリーダーシップ」について述べる。

本書「三事忠告」は、日本では『為政三部書』として知られている。宰相、法務警察長官、地方長官の任に当たる際の忠告として、それぞれ「廟堂忠告」「風憲忠告」「牧民忠告」の三部で構成される。

「為政三部書」(原題:三事忠告)は、我が師父・安岡正篤先生の名解説があり、昭和の政治家や幹部官僚が皆読んでいたという本である。また、多くの経営者にも読まれていた。

令和の今日でも、生きる教訓がある。今まさに必要な教訓が凝縮された指南書である。時代を経ても名著には、人間の営みを見抜いた教訓や智恵が詰まっている。

はじめに

リーダーシップとは、単なる権力の行使ではなく、人々を導き、組織を発展させ、社会に貢献することである。そのためには、知恵、誠実さ、責任感が求められる。本記事では、中国元代の官僚であり儒学者であった張養浩(ちょう ようこう)が著した『三事忠告(さんじちゅうこく)』を基に、現代のビジネスパーソン、行政官、政治家がどのようなリーダーシップを発揮すべきかを考察する。

張養浩と『三事忠告』とは

張養浩(1270-1329)は、元朝の高官であり、儒学者としても名を馳せた人物である。彼は政治的混乱と官僚の腐敗に直面しながら、儒家の理念に基づいた誠実な政治の実現を目指した。『三事忠告』は、彼が引退後に著した政治倫理書であり、官僚としての心得を説いたものである。

日本では『為政三部書』として知られている。宰相、法務警察長官、地方長官の任に当たる際の忠告として、それぞれ「廟堂忠告」「風憲忠告」「牧民忠告」の三部で構成される。

本書は「忠告」と題されているが、単なる戒めではなく、リーダーが持つべき心構えと行動指針が具体的に示されている。特に、以下の三つのテーマが中心となっている。

  1. 清廉(せいれん) – 不正をせず、私利私欲に走らないこと。
  2. 公平(こうへい) – 人を偏らずに扱い、公正な判断を下すこと。
  3. 責任(せきにん) – 自らの職務を全うし、国や民に対する責務を果たすこと。

これらは現代社会においても、リーダーが求められる資質として極めて重要である。以下、それぞれの立場(ビジネスパーソン、行政官、政治家)におけるリーダーシップを『三事忠告』の教えを踏まえて詳述する。

ビジネスパーソン向けのリーダーシップ

清廉:公私の区別を明確にする

現代の企業経営においても、不正のない経営は最も重要である。張養浩は「清廉を失えば、民の信を失う」と述べており、これは現代の企業におけるコンプライアンスや倫理経営の重要性を示唆している。

リーダーとしては、次のような姿勢が求められる。

  • 透明性のある経営:企業の財務や意思決定プロセスを明確にし、不正を未然に防ぐ。
  • 利益よりも信頼を優先:短期的な利益を追求するあまり、不正に手を染めない。
  • 個人的な利益と会社の利益を混同しない:利益相反を防ぎ、公私の区別を厳格にする。
  • 倫理的なリーダーシップ:社員が誠実な行動を取れるような企業文化を醸成する。

公平:人を適材適所に配置する

ビジネスの世界では、公平な人事と評価が組織の健全な発展につながる。張養浩は「能力のある者を登用し、能力のない者を退けることが、国家の繁栄を決める」と説いている。

  • 成果主義と公平性の両立:結果を重視するが、その過程も適正に評価する。
  • 個人的な感情を排除した人事:縁故採用や不公正な昇進を避け、実力主義を徹底する。
  • 多様性を受け入れる組織文化:多様な価値観を尊重し、公平なチーム作りを目指す。
  • リーダーは評価される側である:部下や社会からの評価を真摯に受け止め、成長につなげる。

責任:リーダーは決断し、責任を負う

リーダーの役割は、困難な状況でも適切な決断を下し、その結果に責任を持つことである。張養浩は「民の期待に応えられぬ者は、国を治める資格なし」と厳しく戒めている。

  • リスクを恐れず決断する:判断を先延ばしにせず、責任を持って行動する。
  • 失敗を受け入れ、学ぶ姿勢を持つ:失敗を責めるのではなく、次に活かす。
  • 部下を守る責任感:組織のトップとして、部下の成長と組織の安定を両立する。
  • 社会的責任を果たす:企業の利益だけでなく、社会全体の発展に貢献する姿勢が求められる。

行政官向けのリーダーシップ

行政官は、市民のために公正で効率的な行政を行う責務がある。

清廉:公務員の倫理を重んじる

  • 賄賂や便宜供与を拒否する
  • 税金の使い道を透明化する
  • 政治的圧力に屈しない

公平:すべての市民を平等に扱う

  • 法の下の平等を守る
  • 市民の声に耳を傾ける
  • 公共の利益を最優先する

責任:政策の結果に責任を持つ

  • 効果的な政策を立案する
  • 市民に対して説明責任を果たす
  • 失敗を認め、改善策を講じる

政治家向けのリーダーシップ

政治家は、国や地域の未来を決定する重要な役割を担っている。

清廉:政治の透明性を保つ

  • 金権政治を排除する
  • 国民の信頼を第一に考える
  • 政党や派閥の利益より国益を優先する

公平:国民全体の利益を考える

  • 一部の特権層だけでなく、全市民の利益を考える
  • 政策決定においてバランスをとる
  • 国際社会との公正な関係を構築する

責任:国家の行く末に責任を持つ

  • 長期的な視点で政治を行う
  • 国民の声を的確に反映する
  • 歴史に責任を持つ覚悟を持つ

おわりに

『三事忠告』に記されたリーダーの心得は、現代においてもなお有効である。

  • 公正な倫理観を持つこと(為政者の心得)
  • 組織の透明性を高め、適切な人材を登用すること(民を治める術)
  • リーダー自身が常に学び続け、人格を磨くこと(自身の修養)

この三つの原則を実践することで、ビジネスパーソン、行政官、政治家はより良いリーダーシップを発揮できるだろう。張養浩の教えを現代に活かし、持続可能な社会と組織を築いていくことが求められている。

 

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投稿者プロフィール

市村 修一
市村 修一
【略 歴】
茨城県生まれ。
明治大学政治経済学部卒業。日米欧の企業、主に外資系企業でCFO、代表取締役社長を経験し、経営全般、経営戦略策定、人事、組織開発に深く関わる。その経験を活かし、激動の時代に卓越した人財の育成、組織開発の必要性が急務と痛感し独立。「挑戦・創造・変革」をキーワードに、日本企業、外資系企業と、幅広く人財・組織開発コンサルタントとして、特に、上級管理職育成、経営戦略策定、組織開発などの分野で研修、コンサルティング、講演活動等で活躍を経て、世界の人々のこころの支援を多言語多文化で行うグローバルスタートアップとして事業展開を目指す決意をする。

【背景】
2005年11月、 約10年連れ添った最愛の妻をがんで5年間の闘病の後亡くす。
翌年、伴侶との死別自助グループ「Good Grief Network」を共同設立。個別・グループ・グリーフカウンセリングを行う。映像を使用した自助カウンセリングを取り入れる。大きな成果を残し、それぞれの死別体験者は、新たな人生を歩み出す。
長年実践研究を妻とともにしてきた「いきるとは?」「人間学」「メンタルレジリエンス」「メンタルヘルス」「グリーフケア」をさらに学際的に実践研究を推し進め、多数の素晴らしい成果が生まれてきた。私自身がグローバルビジネスの世界で様々な体験をする中で思いを強くした社会課題解決の人生を賭ける決意をする。

株式会社レジクスレイ(Resixley Incorporated)を設立、創業者兼CEO
事業成長アクセラレーター
広島県公立大学法人叡啓大学キャリアメンター

【専門領域】
・レジリエンス(精神的回復力) ・グリーフケア ・異文化理解 ・グローバル人財育成 
・東洋哲学・思想(人間学、経営哲学、経営戦略) ・組織文化・風土改革  ・人材・組織開発、キャリア開発
・イノベーション・グローバル・エコシステム形成支援

【主な著書/論文/プレス発表】
「グローバルビジネスパーソンのためのメンタルヘルスガイド」kindle版
「喪失の先にある共感: 異文化と紡ぐ癒しの物語」kindle版
「実践!情報・メディアリテラシー: Essential Skills for the Global Era」kindle版
「こころと共感の力: つながる時代を前向きに生きる知恵」kindle版
「未来を拓く英語習得革命: AIと異文化理解の新たな挑戦」kindle版
「グローバルビジネス成功の第一歩: 基礎から実践まで」Kindle版
「仕事と脳力開発-挫折また挫折そして希望へ-」(城野経済研究所)
「英語教育と脳力開発-受験直前一ヶ月前の戦略・戦術」(城野経済研究所)
「国際派就職ガイド」(三修社)
「セミナーニュース(私立幼稚園を支援する)」(日本経営教育研究所)

【主な研修実績】
・グローバルビジネスコミュニケーションスキルアップ ・リーダーシップ ・コーチング
・ファシリテーション ・ディベート ・プレゼンテーション ・問題解決
・グローバルキャリアモデル構築と実践 ・キャリア・デザインセミナー
・創造性開発 ・情報収集分析 ・プロジェクトマネジメント研修他
※上記、いずれもファシリテーション型ワークショップを基本に実施

【主なコンサルティング実績】
年次経営計画の作成。コスト削減計画作成・実施。適正在庫水準のコントロール・指導を遂行。人事総務部門では、インセンティブプログラムの開発・実施、人事評価システムの考案。リストラクチャリングの実施。サプライチェーン部門では、そのプロセス及びコスト構造の改善。ERPの導入に際しては、プロジェクトリーダーを務め、導入期限内にその導入。組織全般の企業風土・文化の改革を行う。

【主な講演実績】
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