養生訓に学ぶメンタルヘルス

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皆さんこんにちは!

本日は、「養生訓に学ぶメンタルヘルス」について述べる。

はじめに

グローバル化が進む現代社会において、ビジネスパーソンは異文化環境の中で働く機会が増え、精神的なストレスも多様化している。特に、多忙な日々を過ごすビジネスパーソンにとって、メンタルヘルスの管理は生産性を維持する上で極めて重要である。

日本の江戸時代には、貝原益軒(かいばら えきけん)という学者が『養生訓(ようじょうくん)』を著し、心身の健康を維持するための心得を説いた。本記事では、『養生訓』の教えを現代のメンタルヘルスの観点から捉え直し、欧米、アジア、日本の事例を交えながら、グローバルビジネスパーソンが実践できるメンタルヘルス戦略を提案する。

2. 貝原益軒と『養生訓』とは何か?

2.1 貝原益軒とは?

貝原益軒(1630-1714)は、江戸時代の儒学者・本草学者であり、日本における健康哲学の先駆者の一人である。彼は中国の医学書や日本の伝統的な養生法を研究し、長寿と健康を実現するための知識を広めた。晩年に著した『養生訓』は、老若男女問わず実践可能な健康指南書として広く読まれた。

2.2 『養生訓』の概要

『養生訓』は、「健康を維持するための心構えや生活習慣」を説く書であり、特に「心身の調和」を重視する点が特徴である。主な教えとして以下のようなものがある。

  1. 節度のある食生活 – 過食を避け、バランスの取れた食事を心がける。
  2. 適度な運動と休養 – 身体を動かしながらも、無理をせず適度な休息をとる。
  3. 心の安定 – 怒りや憂いを抑え、心を穏やかに保つ。
  4. 自然との調和 – 季節に応じた生活を送り、環境に適応する。

これらの教えは、現代のメンタルヘルスにも通じるものであり、ビジネスパーソンにとっても重要な指針となる。

3. 現代のメンタルヘルス課題と『養生訓』の応用

3.1 グローバルビジネス環境とメンタルヘルスの問題

現代のビジネス環境では、以下のようなメンタルヘルスの問題が顕在化している。

  • 長時間労働によるストレス(日本・韓国)
  • ワークライフバランスの崩壊(アメリカ・中国)
  • 異文化適応による心理的負担(グローバル駐在員)
  • リモートワークによる孤独感(ヨーロッパ・アジア)

『養生訓』の教えを現代に応用することで、これらの問題に対処することが可能である。

3.2 節度のある食生活——栄養が心に与える影響

貝原益軒は、「食事は質素にし、腹八分目を守るべし」と説いた。これは現代の栄養学においても重要な教えである。例えば、アメリカの研究によると、地中海式食事(魚、野菜、オリーブオイルを中心とした食事)は、うつ病や不安障害のリスクを低減することが分かっている。

実践法

  • 精製炭水化物(白米・パン)を控え、食物繊維を多く摂取する。
  • オメガ3脂肪酸を含む食品(魚、ナッツ)を積極的に摂る。
  • コーヒーやアルコールを適量に抑え、心の安定を図る。

3.3 適度な運動と休養——「動」と「静」のバランス

『養生訓』では、運動と休養のバランスが強調されている。特に、無理な運動は体を害するが、適度な運動は健康を増進すると述べている。

実践法

  • 1日30分のウォーキングを習慣化する(アメリカの「10,000歩運動」)。
  • ヨガや太極拳を取り入れ、精神の安定を図る(インド・中国の事例)。
  • 質の高い睡眠を確保するために、デジタルデトックスを実践する(日本の禅の考え方)。

3.4 心の安定——ストレスマネジメントとマインドフルネス

貝原益軒は「心を穏やかにし、無理に怒りや憂いを持たないことが大切」と述べた。これは、現代のマインドフルネスやストレスマネジメントと共通する考え方である。

実践法

  • 1日10分の瞑想を行い、心をリセットする(Googleのマインドフルネス研修)。
  • 「書く瞑想」として日記をつける(欧米でのジャーナリングの流行)。
  • 感謝の気持ちを持ち、ポジティブ心理学を活用する(アメリカの感謝日記の研究)。

3.5 自然との調和——都市生活におけるリトリート

『養生訓』では「自然と調和し、四季を感じながら生活すること」が推奨されている。これは、都市生活において失われがちな感覚であるが、現代でも重要な概念である。

実践法

  • 週末には公園や山に行き、自然を感じる(森林浴の科学的効果)。
  • オフィスに植物を取り入れ、ストレスを軽減する(NASAの研究)。
  • デジタルデバイスを離れ、自然音を活用してリラックスする(欧米の「デジタルデトックス」)。

4. テクノロジーと古来の知恵の融合

現代のビジネスパーソンは、テクノロジーの発展による恩恵を受ける一方で、デジタル疲労や過剰な情報負荷によるストレスに晒されている。そこで、最新のテクノロジーを適切に活用しつつ、貝原益軒の『養生訓』が説く「自然な生き方」の哲学を取り入れることが、心身のバランスを維持する鍵となる。

  1. デジタルヘルスと『養生訓』の融合

テクノロジーは適切に活用すれば、健康維持に大きな役割を果たす。例えば、以下のようなアプローチがある。

  • 睡眠トラッカーを活用しながら、規則正しい生活を送る  貝原益軒は「夜更かしを避け、朝は早く起きるべし」と述べた。これは現代の概念である「サーカディアンリズム(概日リズム)」と一致している。スマートウォッチやアプリを活用しながら、自身の睡眠の質をモニタリングし、貝原益軒の提唱する「自然に即した生活」を実践することで、より効果的なメンタルケアが可能となる。
  • マインドフルネスアプリと『養生訓』  『養生訓』では、「心を安らかに保つこと」が健康の鍵とされている。これに対し、現代のビジネス環境では、マインドフルネスアプリ(Headspace、Calmなど)を活用し、1日の中で意識的に「静」の時間を作ることが有効である。貝原益軒の教えとデジタルツールを組み合わせることで、より効果的なストレス管理が可能になる。
  1. デジタルデトックスと「自然との調和」

貝原益軒は、「自然のリズムに従い、季節の変化に応じた生活をするべし」と説いた。これを現代に応用するならば、デジタルデトックスの実践が効果的である。

  • 週末はスマートフォンを手放し、リアルな体験を大切にする  例えば、アメリカのテック企業では「デジタルサバティカル(一定期間、デジタル機器を使用しない)」を推奨する動きがある。貝原益軒の「自然に親しむことで心を整える」教えと共鳴するものであり、現代人にとって有益な習慣である。
  • バーチャルではなく、リアルな対話を重視する  オンライン会議が日常化した現代において、人との「リアルな対話」が減少している。貝原益軒は「親しい友人との対話が、心の安定をもたらす」と説いた。デジタルコミュニケーションを活用しながらも、定期的に対面での会話を意識的に増やすことが、精神的な充実感をもたらす。
  1. テクノロジーを「補助」として活用し、本質はアナログの知恵に学ぶ

テクノロジーはあくまで「補助的なツール」であり、それに依存しすぎることが問題である。『養生訓』の本質は、「自然なリズムの中で、無理なく健康を維持すること」にある。

  • AIの活用と自己洞察のバランス  現代では、AIを活用したメンタルヘルスケア(AIカウンセリングやストレス解析ツール)が発展している。しかし、AIに頼りすぎると「自分の感情を主体的に理解し、コントロールする力」が弱くなる恐れがある。貝原益軒が説いた「日々の習慣の積み重ねによる心の安定」の教えを取り入れながら、AIを補助的に活用することで、より持続可能なメンタルケアが実現できる。
  • ハイテクとローテクのバランスをとる  デジタルデバイスの活用は便利だが、「アナログな時間」も意識的に確保することが重要である。例えば、スマートフォンでスケジュール管理をする一方で、日記は手書きでつける。こうした「デジタルとアナログの融合」は、メンタルヘルスの観点からも有効である。

5. 結論——『養生訓』を現代に生かす

貝原益軒の『養生訓』は、単なる健康指南書ではなく、現代にも通じるメンタルヘルスの哲学を持っている。グローバルビジネスパーソンにとって、適切な食生活、運動、心の安定、自然との調和を実践することは、持続可能な働き方につながる。

現代のテクノロジーを活用しながらも、古来の知恵を取り入れることで、心身のバランスを保ち、ストレスに強いライフスタイルを確立しよう。

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投稿者プロフィール

市村 修一
市村 修一
【略 歴】
茨城県生まれ。
明治大学政治経済学部卒業。日米欧の企業、主に外資系企業でCFO、代表取締役社長を経験し、経営全般、経営戦略策定、人事、組織開発に深く関わる。その経験を活かし、激動の時代に卓越した人財の育成、組織開発の必要性が急務と痛感し独立。「挑戦・創造・変革」をキーワードに、日本企業、外資系企業と、幅広く人財・組織開発コンサルタントとして、特に、上級管理職育成、経営戦略策定、組織開発などの分野で研修、コンサルティング、講演活動等で活躍を経て、世界の人々のこころの支援を多言語多文化で行うグローバルスタートアップとして事業展開を目指す決意をする。

【背景】
2005年11月、 約10年連れ添った最愛の妻をがんで5年間の闘病の後亡くす。
翌年、伴侶との死別自助グループ「Good Grief Network」を共同設立。個別・グループ・グリーフカウンセリングを行う。映像を使用した自助カウンセリングを取り入れる。大きな成果を残し、それぞれの死別体験者は、新たな人生を歩み出す。
長年実践研究を妻とともにしてきた「いきるとは?」「人間学」「メンタルレジリエンス」「メンタルヘルス」「グリーフケア」をさらに学際的に実践研究を推し進め、多数の素晴らしい成果が生まれてきた。私自身がグローバルビジネスの世界で様々な体験をする中で思いを強くした社会課題解決の人生を賭ける決意をする。

株式会社レジクスレイ(Resixley Incorporated)を設立、創業者兼CEO
事業成長アクセラレーター
広島県公立大学法人叡啓大学キャリアメンター

【専門領域】
・レジリエンス(精神的回復力) ・グリーフケア ・異文化理解 ・グローバル人財育成 
・東洋哲学・思想(人間学、経営哲学、経営戦略) ・組織文化・風土改革  ・人材・組織開発、キャリア開発
・イノベーション・グローバル・エコシステム形成支援

【主な著書/論文/プレス発表】
「グローバルビジネスパーソンのためのメンタルヘルスガイド」kindle版
「喪失の先にある共感: 異文化と紡ぐ癒しの物語」kindle版
「実践!情報・メディアリテラシー: Essential Skills for the Global Era」kindle版
「こころと共感の力: つながる時代を前向きに生きる知恵」kindle版
「未来を拓く英語習得革命: AIと異文化理解の新たな挑戦」kindle版
「グローバルビジネス成功の第一歩: 基礎から実践まで」Kindle版
「仕事と脳力開発-挫折また挫折そして希望へ-」(城野経済研究所)
「英語教育と脳力開発-受験直前一ヶ月前の戦略・戦術」(城野経済研究所)
「国際派就職ガイド」(三修社)
「セミナーニュース(私立幼稚園を支援する)」(日本経営教育研究所)

【主な研修実績】
・グローバルビジネスコミュニケーションスキルアップ ・リーダーシップ ・コーチング
・ファシリテーション ・ディベート ・プレゼンテーション ・問題解決
・グローバルキャリアモデル構築と実践 ・キャリア・デザインセミナー
・創造性開発 ・情報収集分析 ・プロジェクトマネジメント研修他
※上記、いずれもファシリテーション型ワークショップを基本に実施

【主なコンサルティング実績】
年次経営計画の作成。コスト削減計画作成・実施。適正在庫水準のコントロール・指導を遂行。人事総務部門では、インセンティブプログラムの開発・実施、人事評価システムの考案。リストラクチャリングの実施。サプライチェーン部門では、そのプロセス及びコスト構造の改善。ERPの導入に際しては、プロジェクトリーダーを務め、導入期限内にその導入。組織全般の企業風土・文化の改革を行う。

【主な講演実績】
産業構造変革時代に求められる人材
外資系企業で働くということ
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